私の好きな人はオオカミでした。

わたし

「そうだ、佐藤千代子は?頼んでみようよ。」

騒がしい教室で急に自分の名前を呼ばれて肩をビクンと揺らす。

教室の片隅で読んでいた本にしおりを挟み、声のした方向へ視線を移す。

「…なん、ですか。」

クスクスと笑みを浮かべる複数の女子グループ。

校則を破った派手なネイルに髪色、そして巻き髪。

スカートも必要以上に短くして、いわゆる中心グループ。

そんな住む世界すらも違うような人達に話しかけられることなどない。

…はずなのに。

「あのさ、今日の夜ちょっと人数合わせにうちらに付き合ってくんない?」

そう口を開いたのはグループの中でも一際目立っている 新木唯奈。

なんのことかさっぱりわからない私は返事をする余裕も与えてもらえず、ただ一方的に投げかけられる言葉を受け止める。

「いやさ、ご飯会?的なことするんだけど、ドタキャンくらって人足んなくて。佐藤さん来てよ。」

初めての誘いだった。

もしかしたら友達になれるのかもしれない。

そのとき、唯奈の隣にいた一人が付け加えたように言う。

「特に何もしなくていいし、ただうちらのとこで静かに引き立て役になってもらえればいいから!」

ああ、真の目的はそれか。
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