一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「萌音・・・」

時間外の会計窓口にやって来た萌音を、ソファに座って待っていた海音が見つけて歩み寄る。

「会計、済ませておいたから」

「・・・うん、ありがと」

俯く萌音の瞼が腫れている。

それが喜びの涙ではないことを海音も気づいていた。

「萌音。帰ろうか」

「うん」

海音はそれ以上何も言わずに、萌音の手を引いて病院の駐車場に向かった。

車に乗り込むと、海音は助手席の萌音に向き合う。

「萌音。強引に話を進めたから怒ってる?それとも子供は欲しくなかった?」

海音の言葉に、萌音はゆっくりと顔をあげた。

結婚はいずれしようと思っていた。

だから海音からもらった指環も、ネックレスにして首から下げて肌身離さず持っていたのだ。

子供は・・・今すぐとは思っていなかった。

しかし、愛する海音の子供だ。

タイミングが今だからといって、この子を否定する気持ちは絶対にない。

゛たとえ一瞬でもこの子を蔑ろにする言葉は口にしたくない゛

それが、偽りのない萌音の本心だ、とこの瞬間に悟った。
< 12 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop