一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
二人はそれから萌音のマンションに向かった。

萌音が祖母から譲り受けたマンションは、3LDK+Sの世帯向けのマンション。

築年数は経っているが、昨年リフォームを終え、新婚さん向けの間取りと空間に生まれかわっている。

そのマンションの内装デザインは、萌音の大学の卒業制作作品、そして建築デザイン賞に輝いたものでもあった。

数々のデザイン賞を手にしている海音をも唸らせる才能。

その片鱗を見せつけるには十分な存在感だ。

その部屋に、萌音は今、海音と住んでいる。

婚前同棲は、お互いの両親も公認だが、妊娠までは想定していなかっただろうな・・・と萌音は苦笑した。

「萌音」

海音は、部屋に入るなり萌音を後ろから抱き締めた。

「俺の夢は萌音の恋人になること。この部屋に住むこと。そして・・・俺達の子供と楽しく暮らすこと・・・」

萌音が驚いて振り返ろうとすると、ぎゅっと抱き締められて叶わない。

「次々に夢が叶って、幸せすぎて怖くなるんだ。萌音が遠くに行きそうで・・・」

萌音の入社当時、佐和田の私怨による巻き込まれ事案で、萌音も海音も経験する必要のない危機に陥った。

その時のことが多少なりともトラウマになっているのかもしれない。

「大丈夫。もう、どこにも行かないよ」

萌音の中にも不安はある。

だが、きっとこの子がきっと二人の゛かすがい゛になってくれるに違いない。

「あ、でも、ごはん食べたら本屋に行きたいな。゛なんとかクラブ゛買いたいから」

「あ、俺もそれ読みたい」

萌音の笑顔に、海音の顔も綻ぶ。

さあ、やることは満載だ。

つわりもない、体調も悪くない今やれることをやろう、と萌音は気合いを入れ直した。


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