一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
年が明けた1月1日。

萌音と海音は、佐和山家に来ていた。

そこで待ち構えていたのは、佐和山風太郎と佐和山千香子夫妻、萌音の父親であり海音の恩師でもある長嶺安輝、そして海音の姉である道端桜とその夫の洋輔だった。

12月27日に弾丸入籍をし、夫婦となったことを報告するために急遽、両家が集まる形となった。

「あけましておめでとう」

「あけましておめでとうございます」

風太郎の一言を皮切りに、居合わせた面々が新年の挨拶を交わす。

おせち料理にお雑煮。

縁起物の料理を囲みながら、日本酒に舌鼓をうつ。

風太郎は萌音に盃を渡そうとしたが、海音に遮られ、ムッとした。

「あれ?君は、両親に断りもせず勝手に婚姻届を出した海音くんではないかね?萌音ちゃんに私の出す酒は飲ませられないとでも?」

嫌味を言う風太郎は相変わらずの恵比寿顔でちっとも怖くない。

「ええ、飲ませられませんね。人の話を聞いてから乾杯に移ろう、とか気の利いた考えは持てないものですかね?」

「何を言うか。然るべきタイミングに婚姻届を出せといったはずだ。その理由も告げずに事後承諾とは親を馬鹿にしている」

呆れ顔の海音に憤慨した風太郎は、頬を膨らませた河豚のような顔でプンプン怒っていて面白い。

「申し訳ありませんでした」

「いやあ、萌音ちゃんには何の落ち度もないんだよ。悪いのは全部海音だからね」

海音を責めていたと思ったら、代わりに謝る萌音にデレデレの顔を見せる風太郎。

「まあまあ、理由を聞いてからでも遅くはないよ。二人には二人の考えがあるんだろう。さあ、話しなさい。海音くん」

証人をつとめてくれた長嶺安輝も、今日は教授ではなく、父親の顔で新年の祝賀の席に参加している。

だが、風太郎と違って眼光は鋭い。

海音は、すぅっと息を吸うと、姿勢を正して言葉を紡いだ。


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