一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「萌音ちゃん」

「あ、杉田さん。営業帰りですか?」

顧客から頼まれたインテリアの設計図を書いていた萌音は、顔をあげて話しかけてきた杉田を見た。

「これ、森田夫妻からのお土産」

「わあ、うれしい」

森田夫妻とは、萌音が入社したばかりの時に海音と一緒に担当した顧客だ。

営業の杉田は、いわば森田夫妻と佐和山建設を繋ぐ窓口。

建築課や設計課のスタッフに繋ぎ、希望を形に変えていくなくてはならない存在だ。

祖父から受け継いだ家を壊し、新築の家屋に建て直した森田夫妻だったが、どうしても残したかった大黒柱を萌音が家具にリフォームしたことで縁が繋がった。

新築家屋は8月には完成し、お披露目会には萌音も参加させてもらった。

海音の提案した間取り。

萌音のお薦めしたインテリアとエクステリアが形となって存在するその様子は、建築士としてもデザイナーとしても感慨ひとしおだった。

「萌音ちゃんに会いたがってたよ。現在双子を妊娠中って言ったら驚いてた。それでこれを差し入れにって」

現在、森田夫妻は新しい家で引っ越し生活をはじめているが、今度は森田妻の弟が家を建てることになった。

今回も、営業は杉田、設計は海音と萌音に頼みたいと依頼があり、有難い限りである。
< 21 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop