一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
そこまで思考が落ちたところで、

「まずは聞きなさい。そこがコミュニケーションの入り口でしょう?萌音ちゃんをほったらかしにしてきた私が言えることではないけど、あなたは言葉が足りないわ。我慢しすぎ」

結子の言葉に反論する気持ちが湧き上がる。

゛話したいときにいなかったくせに゛

゛話を聞こうとせずに食べ物や物で誤魔化そうとしたくせに゛

「ほら、そうやってうつむくでしょ?そんな態度だとこっちは聞きたくても聞けないのよね~」

結子の歯に衣着せぬ言動に言葉をのむ。

「萌音ちゃんはどんな子育てをしたい?私はあなたを産んで後悔してないし、子育てを失敗したとは思ってないわ。でもただひとつだけ・・・」

結子はいつになく真面目な顔で言った。

「あなたの言葉を、気持ちを、もっと真剣に聞くべきだったと思ってる。その時間を持たなかったのは私の落ち度だわ」

じっと萌音を見つめる結子の表情を見て、萌音の目から涙がこぼれた。

子供の頃からずっと寂しかった。

両親の離婚に納得してはいなかった。

仕事を優先する両親が理解できず、でも理解のある子供を演じてきた。

゛両親のようにはならない゛

そんな気持ちが根底にあったから、運命の片割れを信じて、探した・・・。

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