一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「マタハラ発言の相手にも素直に聞いてみるといいわ。何でそんなこと言ったの?って。案外、どうでもいいことだったりするかもよ」

とってきたお皿の上の料理をすべて食べ終えたとき、結子はそうアドバイスをくれた。

考えてみれば、萌音は海音を心配させまいと距離を取っていたように思う。

家でも、会社でも、海音に甘えるよりも桜やしのぶに甘える方が楽で流されていたかもしれない。

萌音の気持ちは萌音にしかわからないように、海音の気持ちは海音に聞かなければわからないのだ。

海音は、さっき何らかの気持ちを言葉にすることで、萌音とコミュニケーションをとろうとしてくれたのだ。

なのに、萌音は

「海音の気持ちはわかった。一人にして」

と、それ以上のコミュニケーションをシャットダウンしてしまったのだ。

海音だけを責めることはできない。

運命の片割れとはいえ、超能力者ではないのだから話さなければ何を考えているのかなんてお互いにわからないのだから。

「夫婦はね、他人なのよ。血の繋がりに頼れない分、話してなんぼなの、萌音ちゃん」

結子は萌音のマタハラの相手が海音だとわかっているようだ。

「そうだね」

「不安な気持ちをわかってあげなさい。男なんてみんな子供なんだから」

笑って話す結子に

゛お前もな゛

と萌音は心の中で突っ込みを入れた。

ほんの少し成長した結子と萌音は、親子というだけでなく、魂の成長を促すソウルメイトとして、仲良くホテルを後にした。
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