一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「実は一つ伝えていなかったことがありまして・・・」

ここにきて内装や外装の変更だろうか?

正直焦るが海音も萌音もプロだ、顔には出さない。

「なんでもおっしゃってください。施工が始まってからでは不満がつのっても修正が難しくなります」

海音と萌音の笑顔に夫の修成(しゅうせい)さんがホッとため息をこぼす。

「最後まで揉めたんですけど、その・・・庭にバスケットボールコートを置きたくて・・・」

「バスケットボール?スリーonスリ-用の、ですか?」

「そうです。僕は子供と庭でバスケットボールをするのが夢で・・・。でも庭でガーデニングをしたいと言う妻の希望を叶えてあげたくて黙ってたんです」

俯く修成を見て、由美が苦笑する。

「先日この人の実家に行った時にお義母さんに言われたんです。どうしてバスケットボールコートはないの?小さい頃からの夢でしょう?って言われて立場がなかった・・・」

「今さらこんなことを言われても困りますよね?流川さん・・・」

上目遣いの修成が可愛い。

「いえ、花壇の部分を端に寄せ、こことここを移動させれば・・・ほら!」

あら不思議、バスケットボールコートを置くスペースが確保できた。

「しかし、道路に面した部分には高いフェンスが必要ですね。万が一でもボールが道路に飛び出さないように」

幸い、山本家は区画のなかでも北西角面に位置する。

隣家に接しない部分でスペースを確保すれば日照権にも触れはしないだろう。

「ほんとだ。これなら子供達が遊ぶときにも犬を飼っても問題ありませんね」

キラキラとした夫妻の笑顔が嬉しい。

「では、この部分はカットしましょうか」

的確なフォローをいれてくれる海音は、萌音が思い付かないような方向から助言をくれる。

「いいですね」

萌音のラフ画を見ながら夫妻が満足する。

萌音は満足の行く仕事ができたことに満面の笑顔を浮かべた。


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