一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「佐和山萌音さん、お加減はいかがですか?」

爽やかイケメンの森久保先生は、40代とは思えないほど若々しい。

多胎妊娠、分娩の研究が専門の名医だ。

兼松先生も腕は確かだが、多胎は専門としていない。

多胎はそれだけでハイリスク妊娠に分類され、妊娠中期からNICUの併設した総合病院への管理入院をすすめられることが多い。

萌音も例に漏れず、大学病院へ紹介された。

どこがよいかと問われたときわ萌音は迷わずN大学医学部付属病院を希望した。

平日の日中なら、隣の敷地にある建物に、教授である長嶺光輝や野瀬教授もいるから安心だと思ったのだ。

「萌音さん、しばらく入院してもらいます。もしかしたら出産まで入院かもしれませんね」

゛ガーン・・・゛

という吹き出しが頭の上に思い浮かんで消えた。

覚悟はしていたが、つわりもなく、比較的順調に経過していただけに、入院しなくてもよいかも、という根拠のない萌音の自信は相当なものだった。

「高血圧と蛋白尿。放っておいたら後々妊娠高血圧腎症になる可能性があります。仕事で無理するのも、食事を適当に済ませるのも禁止です。よろしいですね」

笑顔の中に有無を言わせぬ迫力がある。

現在、妊娠5ヶ月。

先の見えない不安に、萌音はため息をつきそうになったが、グッと我慢した。
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