一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「萌音ちゃん・・・流川君がどうかしたのかな?」

ニコニコ顔の風太郎の両手の拳は握られて少し震えている。

これはかなり怒っている証拠なのだということは、親しい者や上役の職員しか知らないことだ。

萌音は黙って成り行きを見守った。

他の職員も、先程までの不快な表情とは打って変わってニヤニヤしている。

「お父様・・・!いえ、佐和山社長。こんなところに顔を出すなんてどうされたのですか?」

今、鈴原が゛お父様゛と言った?

いや、確実にわざとだろう。

海音を狙っているというアピールなのかと、萌音はチラッと海音を見た。

海音は、萌音を背中側からギュッと抱き締めながらムッとしている。

「いや、不穏分子がわが社に紛れ込んでいると、確かな筋から情報が入ってね。わざわざ確認に来たんだよ」

「ああ、そうだったのですね」

鈴原は、萌音をちらりと見て頷きながら

「ご安心ください。たった今、私がその不穏分子を追い払おうとしていたところですから」

と言って笑った。


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