一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
千香子の生き別れの娘疑惑が次第に現実味を帯び、鈴原の動揺が見てとれた。

「わざわざ私の本当の姓を名乗って、あなたに隙を見せる必要はないと思ったまでです」

黙りこむ鈴原に

゛ダメだよ鈴原さん、ヒールならヒールらしく堂々とやり込めてくれないと・・・゛

と感じる萌音の頭は、すっかり韓流ドラマモードになっている。

「私が何も知らないとでも思っているのかね?鈴原さん」

いい感じに割り込んできた風太郎だが、いかんせん、顔がディズニー風である。

ヒーロー役でも゛アナと○の女王゛のトナカイ位にしか見えない、とても残念だ・・・。

「君がずっと狙っていたのはこれだろう?」

風太郎が手にしているのは、手書きの製図、そう、今度、世界的に開かれる建築デザインコンペに佐和山建設が出すデザインの図面だ。

「そ、そんなもの、狙ったりなんかしてません。佐和山建設にとって大切なコンペの図面なんて・・・でも見せてくれるというのなら見たいですけど、いいですか?海音さん?」

獲物を目の前にした肉食獣のように、鈴原の目が輝いている。

「ちょっと、いいところなのに、割り込まないで下さらない?風太郎さん」

゛風太郎さん゛って言い方、゛ハム太郎さ~ん゛みたいだな・・・。

と萌音は思考を飛ばし駆けたが、考えてみたらコンペのデザインを狙われていたのか?それは一大事だ、とようやく萌音は悟った。

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