一級建築士の甘い囁き～ツインソウルはお前だけ～妊娠・出産編
「スパイ・・・ですか？」

萌音の呟きに、風太郎と千香子が頷く。

「鈴原さんは、オーストラリアのK大学に通っていた。そこの有名な建築家で准教授でもあるディビス・モレノ氏に指南していた。鈴原さんは彼に頼まれてここに潜り込んだんだよ」

「何の証拠があってそんな根も葉もないことを言うのですか！」

「あなたの行動をモニタリングしていたと言ったでしょう？何のリサーチもなしに簡単に人を雇うはずないわ。ましてやあなたのようになんの実績もない方はね」

「なっ・・・！」

顔を真っ赤にした鈴原は、キッと千香子を睨み付けて、

「私を侮辱するのは構いません。ですが、デイビス先生を馬鹿にするのはやめてください」

と大声で怒鳴った。

萌音もデイビス・モレノの名前は知っている。

しかし、自分とは作風も違うし、デザインに感慨を覚えたこともないので、彼のことは大して知らないというのが正直なところだ。

「あなたは知らないでしょうけど、デイビスはこれまで何人もの女学生に手を出しているわ。そしてその子達を各国に送りつけて、ライバルの出方を探らせる。常套な手口よ」

スルーされた仕返しができて気が済んだのか、千香子は腕を組んで、フンっとそっぽを向いた。

「今回は、最大のライバルである流川萌音のいる佐和山建設に目をつけた。君は提出された作品のタイトルから海音の作品だろうと目星をつけたんだろううが、残念だね。海音の机を探しても何も出てくるはずはないんだよ」

風太郎が格好つけて言うが、やはりトナカイレベルだった。

とても韓流スターには見えないところが、逆に千香子から好意を得ることになり、結婚に至ったのだろうと萌音は思った。
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