一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編

産休

「血液と尿検査データは完璧ですね。さすがはお義母さん。栄養管理はバッチリですよ」

主治医の言葉に、付き添いで来ていた千香子は満足げに頷いた。

多胎の場合、希望すれば産前14週から産休がとれる。

萌音は現在産前12週。

在宅ではあったが、世界規模のコンペがあったからギリギリまで働いた。

「ここからはお産の相談になります。ここまで順調に来ましたので、あえての管理入院は選択しませんが、多胎の出産のベストな時期は、37週~38週と言われています。自然分娩も不可能ではありませんが、当院としても帝王切開をお薦めしています」

双子の自然分娩も可能だが、臍帯いわゆるへその緒が絡まったり、一人目の出産後に微弱陣痛になってしまったり、出血が単胎妊娠に比べると多かったり、へその緒が先に出てきたり。

聞けば聞くほど自然分娩のリスクは高く、萌音も千賀子も帝王切開を選択した。

帝王切開は傷も残るし、後々、後陣痛に苦しめられる、次の出産も帝王切開になる可能性が高い等々デメリットもある。

だが、子供は双子だけでよいと考えている萌音は、帝王切開がbetterだと判断した。

ちなみに、帝王切開って変な名前だなと思った千香子が、森久保医師に質問をすると、

「ドイツのカエサルという皇帝が切開分娩で産まれたからという誤認から来ているようですよ。実際のカエサルは自然分娩でうまれたらしいのですが、帝王切開はドイツ語でカイザーといいます、本当の名前は・・・」

森久保医師が嬉しそうに語るが、要するに誤訳が日本にも伝わって定着したという無駄知識に終わった。

37週0日になるのが6月12日。

38週0日になるのは6月19日。

今日は4月10日だからどちらかの週を緊急帝王切開予定日にしましょう、と森久保医師が言ったので、萌音は『夫の予定を聞いて決めます』と答えた。

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