一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
それからあっという間に4月が過ぎ、5月末になった。

萌音のお腹ははち切れんばかりになっている。

後2週間と少しで双子に会える。

佐和山夫妻も光輝も結子も、もちろん海音も、双子が産まれてくることを楽しみにしていた。

そんな中、7ヶ月の桜が切迫早産で入院した。

「桜さん、大丈夫ですか・・・?」

萌音がお見舞いに行くと、病院のピンクの病衣に着替えさせられた桜はぐったりしていた。

千香子は、桜の入院の荷物を取りに、駐車場に行っている。

「あ、萌音ちゃん、大丈夫だよ。少し動悸がするだけ」

桜は腕に点滴をされていた。

二種類の子宮収縮抑制剤のうちの一つの副作用に動悸があるそうだ。

桜は特に動悸が激しく出ているらしい。

くしくも洋輔は海外に長期出張中。

偶然、実家に里帰りしていた時の発症だったから良かったもののタイミングが悪すぎだ。

「ごめんね、今日は検診だったのに・・・」

萌音を気遣う桜は優しい。

「検診は終わりましたよ。でも、子宮頚管が少しがやわらかくなってきているらしくて、明日から出産まで管理入院と言われました」

「ええ?そうなの?萌音ちゃんには悪いけど、私としては心強いわ。どうせなら二人部屋にしてもらいましょうよ」

覇気のなかった桜の顔が、ホッと一安心したように綻んだ。

絶対安静の桜の代わりに、萌音にも二人部屋なら手伝えることがあるかもしれないから。

不安だった萌音も、桜と一緒に乗り越えるなら耐えられるかもしれない。

「森久保先生に頼んでみますね。よろしく、お姉様」

二人は顔を合わせて笑った。
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