一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「どうだった?」

「・・・」

萌音が海音に差し出した検査キットはくっきりと線が出ていた。

それは妊娠反応陽性であることを示している。

「マジか、嬉しいな」

満面の笑顔の海音を見て、複雑な思いだった萌音は少しだけ頬を緩める。

まだ社会人一年目。

仕事も半人前なのに何をしているんだろう、と周囲のスタッフは思わないだろうか?

しかも結婚前の妊娠だ。

両親、特に長嶺教授は激怒(げきおこ)なのではないだろうか・・・。

萌音の心は、愛する人の子供を授かった喜びの反面、複雑な思いに素直に喜びを表現できずにいた。

「萌音。結婚してください。今すぐ」

「えっ?」

海音は、ポケットから四つ折された婚姻届を取り出した。

すでに夫となる人の欄と、保証人の欄は埋められていた。

保証人は佐和山風太郎と長嶺教授の名前が記載されている。

「親父たちからは然るべきタイミングで提出するように言われていた。今がそのタイミングだ」

海音からは躊躇いや戸惑いの表情は汲み取れない。

「そして、その首にぶら下げている婚約指輪を貸して」

海音は萌音の承諾も得ずに、萌音の首に手をかけチェーンを外して指輪を取る。

そしてその指輪を萌音に差し出す。

「これまでもこれからも萌音だけを愛してる。この先何があっても、お前を守り続けるって誓うから、この指環をつけてくれないか」

4月にはすでにプロポーズされていた。

この指輪もその時に贈られたものだ。

萌音は結婚を覚悟できたときに指輪を指に通すと答えた。

それが今というタイミングなのだろうか?

萌音は、海音を見つめる。

迷いのない綺麗な瞳。

萌音だけを見つめる瞳は、どこまでも萌音への愛を伝えてくる。

「赤ちゃんがきっかけ?それならもしも検査が間違いだったら取り返しがつかないよ?」
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