一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「先生もごめんなさい。私が報告を怠ったばかりに予定を狂わせてしまって・・・」

「大丈夫、お産は予定通りに行く方が珍しいんだ。むしろ、ツインでここまで順調にいってくれて嬉しいよ。もう少し頑張ろうね」

痛みは主観的な評価がメインでその程度は個人差が大きい。

常に生理痛に悩まされてきた萌音は、どちらかというと痛みに強い。

予防接種でも、足を骨折したときですら泣かなかった。

「きっと、陣痛が続いていたんだろうけど、破水もしてなかったから気づかなかったんだね。便が出ると思って、トイレで子供を産んでしまう人もいるんだよ。脱落分娩っていうんだけど、そうならなくて良かったね」

萌音もトイレに行こうとして陣痛に気付いた。

誕生した場所にトイレとは書かれないだろうが、そうならなくて良かったと、萌音は心から思った。

「痛むか?萌音、俺の腕を掴んでもいいぞ?遠慮するな」

1分おきになっていた陣痛はもはや、常時痛くなってきていた。

生理痛?そんなもの比ではない痛みが波のように押し寄せる。

恥骨が押される。

頭が降りてきているのだろうか・・・。

朦朧としている萌音の瞳に、不安そうなのに男らしく凛凛しい海音の表情が映る。

「海音・・・」

「萌音、頑張ってる。大丈夫、俺がついてる」

一瞬、二人きりの世界にいるかのように思えたが、

「今から羊膜を破ります。一気にお産が進むから気合いをいれよう」

チーム森久保が一丸となって双子のお産にのぞむ。

いよいよ双子に会える。

萌音の心は期待に膨らんだ。
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