一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「陣痛が止まってる。子宮収縮剤を使おう。それでもお産が進まなかったり、胎児心音が落ちるようなら緊急帝王切開だ。いいですね?」

素人の海音も萌音も、森久保医師に任せるしかない。

二人は手を取り合って大きく頷いた。

新しい点滴が追加されてすぐに陣痛が再来した。

だが、なかなか第二子は出てこない。

「こっちは照れ屋なんだな。俺に似て」

海音が時々笑わせるようなことを言うので、萌音も気が楽だ。

先生が点滴の量を増やしていく。

しばらくして、先生からのゴーサインが出た。

「うん、ここまでは順調、順調。あと少しだよ。お母さんもお父さんも赤ちゃんも頑張ってるね」

森久保医師は萌音一人に頑張れとは言わない。

その優しさがとても素敵なドクターだと思う。

「もう少しだ。そこは狭いよな?早くこっちに出てきていっぱい遊ぼう」

海音は、萌音だけでなく、お腹の赤ちゃんにも声をかけてくれている。

きっと聞こえているのだろう。

恥骨がグッと押される感じが強くなった。

夕べからのじわじわした痛みで、萌音は実はあまり眠れていなかった。

正直、体力も限界に近い。

だが、頑張って外の世界に出ようとしているこの子を見捨てて眠るわけにはいかない。

萌音は最後の気力を振り絞って、お産に立ち向かっていた。
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