『異世界に転移したので、モフモフたちにごはんを作ります!』番外編SS 黒豹のヴォラット視点
「お前の言う通り、間者からの報告は受けておるが、どうにも腑に落ちない事が多すぎてな……。その子猫は、ある日突然カルディフェンと行動を共にするようになった。そして、あのカルディフェンが、あのカルディフェンがだぞ、小さな子猫をそれこそ親にでもなったように面倒を見始めたというではないか」

「ああ、あのルディがな」

 俺は肩をすくめた。

「孤高のフェンリルであり、運命の番を探す男であるルディが、まだ幼い女の子を自分の家に住まわせているなんてな。俺も最初は、なんらかの悪巧みにでもはまったのかと思ったくらいだが……」

 真面目で堅物で、王都で絶大な人気と信頼を集める狼隊長が、子煩悩な親狼になってしまったのだから、世の中何が起こるかわからないものだ。王位継承権は正式に放棄しているとはいえ、ルディ隊長は王家の一員である。その挙動は常に監視されていることはルディ本人も認識している筈だ。

 なのに……。

「子猫を片手に抱っこして、頭をもしゃもしゃ掻かれて、牙を抜かれた狼になってるんだもんなあ……じいさんが心配するのも当たり前か」

「カルディフェンは、何が悪い病気にでもかかっているのではないじゃろうな? もしくは、呪いに侵されて人格が変わったとか……何があったのか、なんでもいいから気づいたことを教えてくれんか?」

 じいさんは、口元をひくひくさせながら、声を潜めて俺に問いかけた。

「教えてくれたら飴をやるぞ?」

「いらんわ、じじい!」
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