かわいくて甘い後輩がグイグイ来る

花野井くんは強引

「せんぱ〜い!おっはよーございまーすっ」

 朝から、元気で可愛い声が――

 ――って

「ええええ」

 なになになに。
 まさか朝から花野井くんに遭遇するとは思ってもみなかった。

「どうしたんですか?せんぱい……僕の顔に何かついてます……?」

 瞳を潤ませて、上目遣いでこちらを見てくる。
 ……なんて可愛いんだろう。

「花野井くん……まさかあなた家からわざわざここまで来たの?」

 ここは私の通学路。花野井くんの通学路とは別方向のはずだ。

「昨日先輩の家まで送ったじゃないですか。道覚えちゃいました〜!」

「ええ……」

「先輩と一緒に学校行きたくて……。

 ……だめ、ですか……?」

 何よ可愛いわね!!何なのよ!

 もう私は、昨日起こった出来事なんて忘れかけていた。だんだんと記憶がぼんやりしてきて。そう、あれは夢――

「――じゃないって、何回言ったらわかります?」

 私の頬が掴まれた。いや、顎を掴まれた。
 これって少女漫画でよく見る、アレ?クイってされるやつ。

「先輩のことだから、今昨日のこと夢にしようとしてたでしょ」

 また私の頭の中を読みやがって……。

「先輩、わかりやすいですから。全部顔に出ちゃってます」

「えっ……」

 恥ずかしい。自覚なかった。

「昨日の今日でその調子だと、ぼーっとして転びそうだから学校まで一緒に行きますよ」

「そ、そうね……?」

 そ、そうね……?と言うのは何回目だ。

「い、いやいや、私と花野井くんが一緒に登校だなんて周りになんて言われるか……!可愛い後輩をこき使う腹黒い先輩、なんて言われかねないでしょ!あなた可愛いんだかr……」

 やばい。また"可愛い"って言ってしまった。昨日"可愛い"って言ったからあんなことになったのに。

「あ、ごめ」

「でっしょー!?僕って超可愛いよねぇ。あ、先輩もかわいいよぉ」

 ……?

「僕、別にかわいいって言われるのが嫌なわけじゃないんですよぉ」

「そうなの……?」

「ただ、いくら可愛くても男だってことを先輩にわかってほしいだけ」

「あら、そう……」

 どうしましょう。なんだかものすごくドキドキしてきてしまった。
 いやいや、反則よね!?この可愛い顔でそんなこと言われたら……ねぇ?

「ほら、学校行きますよ。そんなに騒がれたくないんだったら学校の近くでちょっと別れて行けばいいでしょ」

「そ、そうね……」

 やっとハテナマーク無しで言えた。
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