かわいくて甘い後輩がグイグイ来る

古岡サクラ、苦悩する

「いや、先輩をナメんじゃねぇぞ!?」

 まあ、結局は花野井くんと一緒に投稿し――学校前で二手に別れた私だが。

 ――先輩をナメてんじゃねぇぞ……?

 からかってるとしか思えない、花野井くんの行動。目的がわからない……!彼はどうして私にあんなことをしたのだろう。

 でも、考えてごらんなさい?私は「ドキドキする」とは言った。「間の抜けた顔になった」とも言った。――でも。"赤面"したことは一度もないのよ?

 そう、要するに――私は、花野井くんに負けてない!!

「おい、古岡……」

 ……ん?

「は、はい……?」

「どうしたんだ突然大声出して」

 ハッ!

 今まさか……授業中だった……!?

「え、あーえっとあのその」

 周りを見回してみると、そこは紛れもない教室で、目の前には数学の先生が立っていた。

 ……もちろんクラスメイトも席に座って私を凝視していた……。

 わかりやすくキョドる私。情けない……。

「きっと生徒会の仕事のしすぎだな。古岡は働き者だからな。ハッハッハ!」

 そう言って笑う先生。周りでどっと起こる笑いの嵐。
 恥ずかしいけど助かった……。

 先生、あなたがハゲていなかったら惚れてました。

――――――――――
「おい古岡」

「……うん?」

 授業後、私に話しかけて来る生徒が一人いた。

「佐山くん」

 佐山翔。
 私よりも忙しい生徒会メンバー……、生徒会長であり、私のクラスメイトだ。しかし、見た目だけで言うとあまり真面目、という印象は受けない。どっちかっていうと、チャラい。

「どうしたの?」

「古岡、無理すんなよ?今日の授業ずっと上の空だったじゃん」

「あはは……大丈夫大丈夫……。ちょっとね」

 そう他人に聞かれてみれば、昨日のことを思い出してしまって余計ぼーっとする。
 だってあのファーストキ

「彼氏とファーストキスでもしたのか?」

 ……は?

 何で一発目でその言葉が出てくるのよ、佐山くん。

「いえ、彼氏いないし……ましてやキ、キ、その……それとか!するわけ無いでしょう」

「あ、そう」

 佐山くんは、つまらなそうに言うと、

「まあとにかく疲れてんなら休みな」

 と残し、去っていった。

 なんて優しい生徒会長!

 それにしても……私、本当に花野井くんにからかわれている気がしてきた。
 私一人でぐるぐる悩んでバカみたいな気がする。
  第一花野井くんは2つも年下。同級生との恋愛とかないのかしら。

 ……ん?そもそも花野井くんって私のこと"好き"なのかな?
 そんなことは一言も言われていない。ただキスされただけ。
 「俺は男です」って言われただけ。

 ただ、私に「女の子と違うんですよ」って言いたいだけよね……?

 冷静に考えてみると、私はただ一人で余計な悩みを抱えていたようだ。

「なーんだ!花野井くんってちょっとムキになっちゃっただけで、私にキスしたことに深い意味はないんだ!」
 
 うふふ。心が軽くなった!でも同時に少し腹も立った。いくらムキになったからって何も他人のファーストキス奪うことないじゃない!!
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