かわいくて甘い後輩がグイグイ来る

花野井くんはやっぱり強引

「いや、勝手に解釈しないでくれます?」

「へ」

 ……ん?

「ギャア」

 ふと気がつくと、目の前に花野井くんの顔があった。うわ、びっくりした。

「ななな何のこと!?」

 状況理解が追いつかないまま、花野井くんから離れた。

「いやいや。先輩今ガッツリ声に出してましたよね」

 さっきの、聞かれた!?

「それより花野井くん。ここは三年生の教室よ。一年生は基本的入ってはいけないじゃない」

「……何言ってんの?」

 何やら花野井くんが呆れ顔だ。

「ここ、せ・い・と・か・い・し・つ!……わかります?」

 ……あらあら?

「あら、本当ね」

 自分ではそんなに考え込んだつもりはないのに、思ったより花野井くんについて考え込んでいたようだ。
 そういえば生徒会長は会議だし、他の生徒会メンバーは文化祭の予定を立てるために各委員会を回ったりしているし。
 副会長という割と地味な立場である私は、生徒会室で一人で仕事をまとめている、という状況だったはず。

 ぼーっとして忘れていた。

「はぁ……。先輩だいじょーぶですかー」

「ははは……」

 花野井くんは、生徒会メンバーとはいえ仕事がそんなにない"書記次長"という立場なので、こうして私が一人で仕事をしているところに話しかけてくる。
 今のように生徒会の長机を前にし、パイプ椅子に座っている私に、机の向こうから身を乗り出して。

「それと。さっき思い切り話題ずらしましたけど」

 ……う……。

 何気に二人きりの生徒会室に、花野井くんの男子にしては高い声が響く。

「俺が先輩にキスしたことに深い意味はない?ふざけてます?」

「いや、だって」

「何より好きでもない相手に"男として見てほしい"なんて思います?思いません」

 花野井くんは何だか怒っているのか、自問自答になっている。

「要するに」

 花野井くんは、再び私の目の前に迫る。



「俺、先輩のこと好きですよ」



 ……。

 ……はい……?

 それは、あまりにもあっけなかった。

「……おう」

 謎の返事しかできない。

 何だ今のは。告白……?
 告白ってこんなにサーッと終わるものだっけ?こんな簡単にするもんだっけ?

「あれ?もしかしてまた頭が追いついてませんか?」

 言いながら花野井くんは、私の頬に手を伸ばした。からかうような表情。花野井くんの長い睫毛が揺れる。

「え?あの、え?花野井くん?」

 "好き"と言われたあとにさらにこんな行動をとられてはますます頭が追いつかない。

「これだから先輩は」

 そのまま花野井くんは、私を引き寄せ、


 ――キスをした。 


「……面白いなぁ(笑)」

 おそらく真っ赤になっていたであろう私の顔を見て、心の底から面白そうな表情を見せた。
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