やってきた冬に、舌打ちをした。
「……霜咲(そうさく)」
「何」
「寒いよ」
黙ることをやめてみる。
「そりゃそうだろ。そんだけ薄着じゃ」
はぁ?と言われて、お終まい。……わかってましたよ。
「…………っ、貸す」
「えっ、いや、いいよ!」
「じゃあ半分だけな」
差し出されたのは、手袋。半分……ていうか、片方?
「でも、霜咲が、」
「うるせぇ、黙ってろよ」
……ずるいなぁ。
「柊南(しゅうな)」
「何?」
「しゅーな」
何よ、と手袋から顔をあげる。ちょっと、ムッとして。
「しゅーな」
再度、やる気のないような声で呼ばれる。
……あぁ、もう、反則だってば。なんでそんなに笑ってるの。
小さい子をあやす時のように、目を細めて、優しく微笑んで。そんな優しさ、痛いのに。……沁みる。