やってきた冬に、舌打ちをした。



「もう、こっちに来るのはやめようよ。嫌だよ」



「やだね。……ずっとあの場所にいる方が嫌だ」



「……それも、そうだけど……」



みんな時を重ねているのに。私たちだけ、置き去り。



あの場所では、たくさんのひとがいる。だから、1度離れ離れになると……きっともう会えない。そんなの嫌で、怖くて、私は霜咲につきまとう。



「でも、なんで冬にこっちに来るの」



「……」



彼は前を向く。ちらりと横目に私を見た瞬間を、捉えてしまった。優しい目だったこと。……痛い。



「俺たちが、死んだ季節だから」



「っ、」



「父さん母さん、泣いてたら嫌だろ」



高校生の、冬。私たちは死んだ。事故だった。車が突っ込んできた。死んだ。



あれから私たちは、歳をとらない。



あれから私たちは、冬にだけこの世界に足をつける。



誰にも見えなくて、誰にも触れてもらえなくて、それでいいと霜咲はいった。



お父さんとお母さんは、いつも泣いている気がする。もう、幸せでいてくれていいのに。


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