やってきた冬に、舌打ちをした。
「もし泣いてても……何もできないよ。見てるだけは、苦しいよ」
「できるよ」
「できないよ……」
「できる」
彼は、私を抱きしめた。……ひとごとに思えるのは、温度がないから。
「寒いとか暑いとかは思うのに……熱はもってないから不思議だよね」
「不思議だからいいんだよ。なにがあるかわからない」
「どういうこと?」
にっと笑って、頭をぽんぽんとなでてくれる。
「奇跡は起こる」
息を、のんだ。
「いや、起こすんだ」
熱を帯び、ハッキリとした目に見つめられる。
背筋に指先が這わされたようだった。
怖くはないけれど、初めてみた。……ぞくり。