やってきた冬に、舌打ちをした。



「もし泣いてても……何もできないよ。見てるだけは、苦しいよ」



「できるよ」



「できないよ……」



「できる」



彼は、私を抱きしめた。……ひとごとに思えるのは、温度がないから。



「寒いとか暑いとかは思うのに……熱はもってないから不思議だよね」



「不思議だからいいんだよ。なにがあるかわからない」



「どういうこと?」



にっと笑って、頭をぽんぽんとなでてくれる。



「奇跡は起こる」



息を、のんだ。



「いや、起こすんだ」



熱を帯び、ハッキリとした目に見つめられる。



背筋に指先が這わされたようだった。



怖くはないけれど、初めてみた。……ぞくり。


< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop