彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)


始業式の翌日から、夏休み明けのテストが始まる。

最初の日程の方は、午前中でテストは終わる。

終盤に近づくにつれ、受ける科目が減って行くので、最終日は午後までテストだ。


「やっと終わった~」

「だるいよね~」


チャイムが鳴って、テストが回収される。

私は急いで荷物をまとめて教室を出た。


「そんなに急いで帰らなくても、誰もいじめないのにさぁ~?」


背後から、ふざけた口調で叫ぶ中山の声が響く。

大きな爆笑が教室で起こっていたが無視する。

それどころじゃない。



(ついに来た!吉田さんとお昼御飯・・・・!)



昔々、初めて原田夏美と岡村マキとご飯を食べた時みたいな気持ち。

不安と期待と戸惑い。

待ち合わせ場所である体育館裏へと向かう。



(見つからないように!渕上の仲間達に!他の生徒に見られないように―――――行かなきゃ!)



周りは敵ばかり。

今なら、ジャック・バウアーの気持ちも、007の気持ちもわかる。

人目につかないように、周りを警戒しながら進んだ。



(吉田さん、もう来てるかな?)



昨日とは違い、体育館は静かだった。

自分の足音と心臓の音ばかりが気になった。

大きく聞こえて、見つからないかとドキドキした。



「はぁーはぁー・・・・ここ?」


指定された場所に着く。

そこには誰もいない。



「・・・。」

(吉田さん・・・本当に来てくれるかな?)

「す、菅原さん!」

「ひゃい!?」



突然名前を呼ばれる。

びっくりして、変な返事になってしまったが振り返る。



「よ、吉田さん!?」

「す・・・菅原さん!足速いよぉ~」



息切れしながらも、ふにゃっと笑う吉田さんがいた。


「よ、吉田さ・・・」

(本当に来てくれた・・・)

「ありがとー菅原さーん!!」



そう言いながら、彼女は私に抱き付いてきた。



「わっ!?」



どこかで嗅いだ覚えのある香り。



「来てくれて嬉しい~!誰にも見つからなかった?」

「う、うん。大丈夫です。吉田さんは・・・」



そこまで行って、先ほど彼女が言った言葉がよみがえる。



「あの!私のこと、足が速いって言いましたよね・・・!?」



まるで、追いかけてきたかのような口ぶりだった。

恐る恐る聞けば、あっけらかんとした口調で言われた。



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