彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)


「実はね・・・明日の物理のテスト範囲で、わからないところがあるんだけど・・・教えてもらえないかな?」

「え!?」


そこでヤマトの1人武勇伝が終わる。

そしてそのまま、ゆっくりと物陰に移動して消えていく。



(・・・気が済んだのか?見つかる前に引き上げてくれてよかったけど・・・)



「あ~・・・やっぱり、迷惑だったよね?図々しかったよね・・・?ごめんね、すがちゃん・・・!」

「へ!?い、いえいえ!いいですよ!教えますよ!」

「えっ!?いいの!?」

「はい、私のわかる範囲でしたら。」



うっかりヤマトの方に意識が集中したため、遅れてしまった相手への返事。

慌てて返せば、暗くなった吉田さんの表情が明るくなる。



「ありがとう~!すがちゃんしか、頼る相手がいなかったから本当に助かる!」



嬉しそうに言うと、カバンから物理の教科書を取り出しす吉田さん。



こうなったら、ヤマトは無視よ!無視!


「すがちゃん、頼ってばっかりでごめんね?もし、あたしに出来ることがあったら何でも言ってね!?」

「あ、ありがとうございます。」

「感謝するのは私の方だよ!?そうだ、ミニ扇風機持ってるから使って!ここ暑いから持ってきたんだ~!」

「あ、ありがとうございます、吉田さん。」

「ちがーう!よっちゃんでしょう~!?」

「あ、ごめんなさい!よ・・・よっちゃん・・・。」

「うん♪」



謝って、呼び方を訂正した時の相手の顔は嬉しそうに見えた。

その笑顔を見て、また心があたたかくなる。



「ねぇ、すがちゃん。テストが終わったら、一緒に遊びに行かない?」

「遊びに、ですか?」

(ずいぶん気が早いな・・・)


そう思ったけど、



「嫌いだった?」

「・・・いいえ。」



嫌ではなかった。



「よかった!じゃあ、一緒に遊ぼうね!タピオカ飲みに行って、プリクラ撮って~衛が行かない!?私、気になる恋愛映画あるんだ~」

「恋愛映画・・・」



その言葉で思い出す。


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