彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)





お店で買い物を済ませると、大急ぎで目的地に向かった。


(早く帰らないと、瑞希お兄ちゃんのお出向えが出来ない!)


夕方に近づき、帰宅する人で増えてきた。

そんな人ゴミをすり抜けながら、定食屋さんもかねたNPOの事務所を目指す。

満足そうな顔で、お店から出てくる人と入れ替わりで店内に入った。



「いらっしゃいませー!」

「こ、こんばんは!渡瀬さんと瑠華さんいますか!?」

「あら、チョコちゃん。」



出迎えた声とは別の声がした。

聞き覚えのある色っぽい声色。



「瑠華さん!」



高そうなコートを着た瑠華さんが立っていた。



「よかったわ、会えて。急に早出にしてくれって言われて、今日はもう会えないかと思っていたのよ。」

「早出?」

「さあ、こっちへ来て。店長、いいかしら?」

「いいよ。その子は前に、見たことあるから。」



厨房にいる男性が笑顔で言う。


「おいで、チョコちゃん。」

「あ、はい。」



そう言うと、ニッコリ笑って私の手をにぎる瑠華さん。

そして、そのまま、店の奥へと連れて行かれた。



「あの、瑠華さん、手・・・」

「チョコちゃん、水仕事をしてるでしょう?手荒れしてるわよ?」

「え!?そ、そうですか!?」

「薬、ぬってあげる。学さーん!」

「え?どうしたの、瑠華ちゃん?」



瑠華さんがふすまを開けながら呼べば、中から男の声がした。


「忘れ物?早くしないと、遅刻・・・・あ、チョコちゃん!?」

「こんばんは。ご無沙汰してます。」

「良いところに来たな!丸ちゃんもいるぞ!」

「え!?」

「・・・よ、よう、チョコ!」



中をのぞけば、テーブルに向かい合わせに座った男性2人がいた。

渡瀬さんはすぐに立ち上がり、私の方へとやってきた。




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