彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)



「謝らなくていい。そういうの、俺は悪くねぇから。」

「え?」

「俺に特別扱いされてるって、思っていいぜ。つーか、ちゃんと自覚しろよ?」

「え!?」



(そ、それって―――――――――)



顔が熱くなる。

瑞希お兄ちゃんから目を離せない。

しかも、目と目が合っている状態でだ。



「あ・・・あの、僕・・・・!」

「俺は凛に言ったからな?今日からしっかり自覚してくれよ?俺の特別大事な人間って。」



ふんわりとして笑うと、私から視線をそらす。

そらすと言うより、前へと戻した。



「うはははは!やっと信号変わったわ~!」



ヤマトのその声で、青信号になったのだと気づいた時、原付は走り出していた。





(・・・・・・・・・特別、大事・・・・・・・・)





その言葉が、何度も何度も頭の中をめぐる。

驚きと嬉しさで体が熱い。

ちょっと迷ったけど・・・・・瑞希お兄ちゃんの腰に回していた両手に力を込めた。
ぎゅっと強く、しがみついてみる。




「あちぃーぞ、凛。落ちるよりはましだけどよー」




そっけなく言われ、ちらっと彼を見る。




(あ!?耳が・・・!?)




真っ赤だ。

瑞希お兄ちゃんの耳、真っ赤になってる・・・!

両方とも真っ赤になってるってことは――――――





「・・・・・・・照れてるのですか?」

「うっせーばっか!」





乱暴な言葉で返されたけど、嬉しかった。

ふと、視線を感じて横を見れば、少し後ろを走るヤマトが目に入る。

ぐっと親指を立ててくれる親友に、思わず同じポーズで返す。





「こら凛!あぶねぇーから離すな!つかまってろ!」

「はぁーい、ごめんなさ~い♪」





私を心配して下さる言葉が嬉しくて、愛しくて、ぎゅーといつも以上に瑞希お兄ちゃんに密着する。

きっと暑くてかなわないはずなのに、彼は小さく「わかればいい」とだけつぶやく。

そのまましばらく、瑞希お兄ちゃんの後ろで、幸せな時間を過ごした。







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