彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)
顔から手を離すと言うよりも、地面にたたきつけるあつかいだった。
ドスン!!
「いってぇー!」
おかげで、盛大にしりもちをつく速水亜都司。
「お兄ちゃん!」
「大丈夫か、亜都司!?」
真っ先に駆け寄って労わる仲間と妹に、混乱気味に亜都司は悪態をつく。
「くそ!なんなんだあいつ!?女じゃないって・・・なにもんだよ!?」
「なんでぇ、なにも知らねぇで、いじめられてたのか?」
フーとため息をつくと、背広のポケットから煙草の箱を出しながらおじさんが言った。
「ここいらどころか、日本全国じゃ~みんなが知ってる有名人、龍星軍の初代総長・真田瑞希ってのが、そいつのことだぞ?」
「「え!?」」
「・・・やっぱり、真田瑞希、さんか・・・」
驚く兄妹をよそに、神城さんは冷静だった。
「4代目さんが『お兄ちゃん』と呼ぶとなれば、初代総長の真田瑞希さんしかいないもんな。」
「ちっ!俺は男だ!テメーのツレ、人を見る目がねぇんじゃねぇーのか!?」
「な!?あんたその見た目でそういうこと言うのかよ!?」
「亜都司お兄ちゃん、失礼だよ!真田さん、本当にごめんなさい!兄に代わってお詫びします!ごめんなさい!!」
「ちょ、亜都子!?」
「あ、いいんだよ、お嬢ちゃん。あつこちゃんだっけか?あつこちゃんが謝ることないからな?むしろ、あつこちゃんに免じて、この辺でカンベンするからよ~」
「はあ!?ざけんな!不意打ちだっただけで、俺の本気はこんなもんじゃねぇぞ!?」
「マジでガキだな、お前?強けりゃ、不意はつかれねぇだろうが!」
「ぐ・・・タイマンだ!タイマン勝負を申し込む!」
「ばかよせ亜都司!」
「やめてよ、お兄ちゃん!」
「いいだろう。敗北の思い出くれてやんよ。キモいシスコン!」
「はあ!?誰がキモいだとぉー!?お前だって、べたべたのきしょいブラコンのくせに!」
「シスコンよりましなんだよ、クソシスコン!筋金入りのブラコンをなめんなよ!?」
「俺だって、上級シスコンだ!男女ブラコン!」
「殺すぞシスコン!」
「やってみろやブラコン!」
ののしりあう瑞希お兄ちゃんと速水君を見ながら思う。
(どちらも、ブラコン・シスコンであることは否定しないんだ・・・・)
〔★自覚しているタイプだった★〕