彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)
泣き声が、涙が、出なくなった時、私はぼんやりとまどろんでいた。
(眠い・・・・)
睡魔を感じながら、うとうとしていた。
というか、半分寝ていたかもしれない。
私の頭と背中を・・・規則的な動きで撫でられて、気持ちがよくなっていた。
カクン!と身体がゆれ、はっと身を起こす私に、「大丈夫だ。」と言って、頭を優しくなでて下さる瑞希お兄ちゃん。
好きな人からの優しさで、緊張が解けて、余計に気持ちよくなっていた。
「大丈夫だから、寝ちまえ。」
「うん・・・・」
ありがたいお言葉を頂き、ゆっくりと両眼を閉じた。
それで起きてるような、寝てるような状態を繰り返していた。
眠りの世界はすぐそこまで来ていた。
コンコン!
だから、その音が耳に届いた時も、びっくりして体がけいれんしたけど、目を開けるまでにはいたらなかった。
「なによ?」
ノックする音に、瑞希お兄ちゃんが不機嫌な声を出す。
「瑞希、今いいか?」
烈司さんの声だと思いながら、瑞希お兄ちゃんの腕の中でうとうとしてた。
「無理だ。手が離せねー」
少しだけ小さい声で言う瑞希お兄ちゃんに、問いかけてきた人が扉を開けた。
体を起こす気にもなれず、瑞希お兄ちゃんの腕の中でじっとしてた。
烈司さんは言葉をにごしながら言った。
「ジャマして悪いが・・・瑞希に客だ。」
「あん?待たせるか、帰らせるしろ。」
「その2択しかねぇーのかよ?」
「今は凛で、手が離せねぇ。」
(瑞希お兄ちゃんってば、私のために・・・!?)
お店よりも、私のことを優先してくれたことが嬉しかった。
なによりも、瑞希お兄ちゃんとの密着状態が維持できるのが嬉しくて、そのまま眠りの世界へ向かおうとしたのだが――――――
「つーか、意味は同じだよな?誰かって聞く前から拒否かよ?」
「ちっ!誰よ?」
「埼玉のサツ。」
「え!?埼玉のおまわりさん!?」
その言葉で覚醒、身を起こせば、目を丸くするお兄さん2人がいた。