彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)





泣き声が、涙が、出なくなった時、私はぼんやりとまどろんでいた。




(眠い・・・・)




睡魔を感じながら、うとうとしていた。

というか、半分寝ていたかもしれない。

私の頭と背中を・・・規則的な動きで撫でられて、気持ちがよくなっていた。

カクン!と身体がゆれ、はっと身を起こす私に、「大丈夫だ。」と言って、頭を優しくなでて下さる瑞希お兄ちゃん。

好きな人からの優しさで、緊張が解けて、余計に気持ちよくなっていた。





「大丈夫だから、寝ちまえ。」

「うん・・・・」





ありがたいお言葉を頂き、ゆっくりと両眼を閉じた。

それで起きてるような、寝てるような状態を繰り返していた。

眠りの世界はすぐそこまで来ていた。





コンコン!





だから、その音が耳に届いた時も、びっくりして体がけいれんしたけど、目を開けるまでにはいたらなかった。



「なによ?」



ノックする音に、瑞希お兄ちゃんが不機嫌な声を出す。



「瑞希、今いいか?」



烈司さんの声だと思いながら、瑞希お兄ちゃんの腕の中でうとうとしてた。



「無理だ。手が離せねー」



少しだけ小さい声で言う瑞希お兄ちゃんに、問いかけてきた人が扉を開けた。

体を起こす気にもなれず、瑞希お兄ちゃんの腕の中でじっとしてた。

烈司さんは言葉をにごしながら言った。





「ジャマして悪いが・・・瑞希に客だ。」

「あん?待たせるか、帰らせるしろ。」

「その2択しかねぇーのかよ?」

「今は凛で、手が離せねぇ。」

(瑞希お兄ちゃんってば、私のために・・・!?)





お店よりも、私のことを優先してくれたことが嬉しかった。

なによりも、瑞希お兄ちゃんとの密着状態が維持できるのが嬉しくて、そのまま眠りの世界へ向かおうとしたのだが――――――





「つーか、意味は同じだよな?誰かって聞く前から拒否かよ?」

「ちっ!誰よ?」

「埼玉のサツ。」


「え!?埼玉のおまわりさん!?」





その言葉で覚醒、身を起こせば、目を丸くするお兄さん2人がいた。






< 688 / 922 >

この作品をシェア

pagetop