彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)



(気持ち悪い・・・・!)

「凛?大丈夫か?」



シルキロールの上から口を押える私と、心配そうに私を見る瑞希お兄ちゃんの目があった。



「・・・なんでもないです・・・」

「・・・そうか。」



・・・なんでもないと言ったのに、彼は私の背中をなでてくれた。

介抱する時のように、優しい動きだった。





(しっかりしなさいよ、凛!)





考えてどうにもならないことは、考えちゃダメ!





(今は凛道蓮なんだから、菅原凛の出来事は無視して・・・・!)

「・・・・・・・・・瑠華さんに乱暴した犯人達は、捕まったんですか?」





話を元に戻せば、悔しそうな顔でツバキさんは言う。





「凛道さん、MESSIAHに関わったあなたならわかるでしょう?性犯罪の被害者は、だいたいが泣き寝入りです。・・・意味はわかりますね?」

「・・・すみません。」



つまり、被害届は出していない。



(犯人も捕まってない・・・)



犯罪行為をしたのに、逮捕されていない。

野放しにしている。





(私と、おんなじだ・・・!!)





集団レイプという言葉の響きが、つらさから怒りに変わった時、ツバキさんは次の言葉を発していた。





「やったのは、永山偉人の仲間達で間違いないです。なぜなら、違法カジノの証拠のデータだと言われたものの中に映ってたんです。データの中身は・・・・・瑠華が覆面をした男達に―――――――!」

「そこまででいいです!!」





無意識のうちに制止の言葉をかけていた。



レイプ被害になった瑠華さんを思ったからじゃない。



―俺らは優しいから安心してくれよ、巨乳ちゃん?―

―今、大人の保健体育、教えてあげるからな~―

―それじゃあ~いただきまーす!―





(いやだっ!!!)





自分が強姦されかけた記憶がよみがえったからだ。

気分が悪い。

怖い・・・。

ギュッ。





(え!?)





震えが止まらない手を握られる。





「汚れた女はいらねーから、別れたってことか?」

「瑞希お兄ちゃん!?」





言ったのは、私の手を握りしめてくれた大好きな人。





「そういう意味ではないと思います。」





瑞希お兄ちゃんの質問に、ツバキさんは静かに答える。





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