彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)
瑞希お兄ちゃんに誘導され、お店の正面出入り口から中に入る。
カランカラーンという音が室内に響く。
中には誰もいなかった。
「あの、他の皆さんは?」
「まだなんだよ。一番早くて烈司かな~」
「そうですか~まだですかぁ~♪」
ならばしばらく、2人きりね!?
「凛、準備するから座ってろ。」
「はい♪」
私の頭を撫でると、オープンキッチンへと行く好きな人。
言われた通り、定位置に座って待つ。
私のため、冷たいグラスに、氷と冷えた液体を流し込むお兄ちゃん。
素早く、ストロー付きのグラスが用意された。
「ほら、水分。飲め飲め。」
「いただきまーす!」
ウキウキしながら、ストローに口づける。
マスクの下から吸いあげれば、口の中でオレンジ味が広がる。
「美味いか?」
「美味しいです♪」
「そうか、そうか。よしよし!」
「えへへ~♪」
再びナデナデされ、かなり浮かれる。
そんな私に瑞希お兄ちゃんは言った。
「凛、そのシルキロール、ボロくなったよな?」
「えっ!?」
瑞希お兄ちゃんからもらったプレゼントへのコメント。
ご本人からの指摘に慌てた。
「す、すみません!大事に大事に大事に使っていたのですが!?」
「大事言い過ぎだろう?それはわかってる。つーか、それに予備はねぇよな?」
「あ、はい!ないです。」
瑞希お兄ちゃんからの贈り物に、予備など用意するわけがない。
(用意などすれば、無礼でしょう!?)
首を縦に振れば、彼がふんわりと笑う。
「だったら、ちょうどいいな。」
「え?」
「凛に見てほしいもんがるんだ。」
そう言うとテーブルに置いてあるタプレットを手に取る。
瑞希お兄ちゃんのタプレット。
それに視線を向けていれば、彼が私の背後に立った。
「これなんだけどよぉー」
「え?」
しゃべりながら、私の背後に覆いかぶさる。
「えっ!?」
椅子に座っている私に、突然のバックハグ。
「あぁあう!?」
「うお!?急に叫ぶな!どうした!?」
「い、いいいい、いいえ!」
(だって、抱きしめてくるから!)
と言いたかったけど、口にしたらやめてしまうかもしれない。
だから首を横に振って話題にしなかった。
〔★凛の『ちゃっかり』が発動した★〕
熱くなる顔に、瑞希お兄ちゃんの吐息がかかる。