皇子に嫁いだけど、皇子は女嫌いでした
この城の中には何個も庭があり、皇族専用の庭や、後宮の庭。



皇后の庭とか、こうして働く者が自由に歩ける庭なんか。



こんな場所には滅多に来ない。



「よい、頭を上げろ」

「はっ‼︎」

「…………何をしているのだ?」

「はい、仕事が終わった彼女を部屋まで送り届けるため、歩いておりました」

「仕事はなんだ?」

「俺っ、私は庭師を‼︎彼女はランドリーメイドをしております」

「遅くまでご苦労だな…」

「もったいなきお言葉っ‼︎」



カップルか。



なんか、楽しそうに歩いてたな…。



「名はなんという」

「ハリーです」

「ふたりは交際しているのか?」

「あのっ…えっと…」

「禁止というわけではないし、仕事が終わっているならなんの問題もないだろう?」

「はい、親しくさせていただいております」

「そうか、似合いのふたりだな」



なんだろう。



自分がひどい男に見えるのは。



あんな風に笑いながら歩いたこと、俺とアリスにはあっただろうか。



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