皇子に嫁いだけど、皇子は女嫌いでした
そんな殿下から、珍しくお茶の誘いが来た。



冷戦状態で、正直会いたくない。



どんな顔して会えばいいかわからないし、殿下はいつも通り、私に嫌がらせをしてくるに違いない。



お忍びで出かけた時、初めて馬に乗った。



初めて自由に下町を歩き、欲しいものを自分で買って。



寒いと言った時、優しくて包んでくれたあの暖かさを思い出すと、とても切ない気持ちになるのだ。



あれが本当の殿下ならば、私も好きになっている。



下町で庶民と屈託のない笑顔で笑い合う。



行きつけのお店に連れて行ってくれて、私の好きなものを、さりげなく探してくれた。



そんな殿下なら、私は恋に落ちてしまっているだろう。



「どちらでお会いするの?」

「城内のお庭だそうです。寒くなって来たので、こちらを」



フワフワのショールを羽織り、足取り重く向かったお庭。



すでに殿下は用意されたテーブルの前に座っていて、長い足が組まれていた。



< 154 / 480 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop