皇子に嫁いだけど、皇子は女嫌いでした
伸びて来た手が、ぽんっと頭を撫でる。



滲む視界で殿下を捕らえると、さっきの目よりも若干柔らかくなったように感じた。



「反省したのだ、俺だって」

「反、省…?」

「アリスと、笑いながら歩いてみたいと思った。たまにはアリスの喜ぶ顔が見たいと、そう思った。俺がアリスにすることは、きっと普通のことではないのだろう?」

「はい…」

「それでも、俺はお前と…笑い合ってみたくなったのだ」



きゅんと、心臓が痛い。



悲しげに笑う殿下に、申し訳なさが溢れ出して止まらなくなって。



ずるいの、殿下は。



こういうこと、いう人じゃないのに。



「すまない、やり方がわからない」

「私もっ、わかりませんっ…」

「こういう泣き方は好きではないな…。もう、泣きやめ」

「止まりませんっ…」

「次はふたりで、どこかへ出かけよう…か?」

「よろしいの…ですか…?」

「だから、早く泣き止んでくれ。これは困る涙だ…」



初めて優しく抱きしめられて、ちょっと殿下のことを理解した。



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