FADE〜最後の記憶
「分かってて来たんじゃないの?
でも…無事で良かったわね。」
「あなた…お名前は?」
「一ノ瀬……。」
「一ノ瀬…何?」
「……分からない…。」
「どこから来たの?」
「……分からないの…。」
「お家の電話は、何番?
あなたが無事だってことお伝えしないと
いけないし。」
「……それも……分からない!
何にも分からない!」
私は自分の名前が一ノ瀬ということ以外は
何一つ分からないようになっていた。
急に不安で…心細く…ガタガタと
震えていた。
まるで捨て猫のように…