FADE〜最後の記憶
私が寝付くとその女性は襖を閉め
部屋を出ると階段を降りて行った。
「あっ…お母さん。」
「どうだい?あの娘は?」
「気がついたみたいだけどね…。」
「どうかしたんかい?」
「うん…。何か変なのよ。」
「変て?」
「…あの娘…自分の名前も、歳も
来た所も、親のことも分からないの。」
「お父さんが駅で見つけた時
何も持ってなかったんだよね?」
「そうよ。身分証明になりそうなものも
財布すら持ってなかったからね。」
「携帯とかも…?」
「持ってなかった。だから連絡のしようも
ないのよね。親御さんはきっとご心配
なさってるはずなんだけどねえ。」