先輩の彼女
谷岡君がポケットから出したのは、私のキーケースだった。

「あっ!それ、私の!」

「やっぱり。」

谷岡君は私の手の中に、キーケースを置いた。

「久実さん。間野さんが来て、カバンで頭隠してたし。その時に、落ちたんじゃないかって。よかった。拾っておいて。」


ああ。

なんて谷岡君は、優しい子なんだろう。

この時、つくづくそう思った。


「有り難う。」

その優しさに、涙が出てくる。

「あっ、でも。今、鍵渡したとしたら、土日はどうしてたんですか?お友達の家にでも、泊まってたんですか?」

「ああ……実は、不動産に電話して、新しい鍵に変えてもらったのよ。」

正直に、谷岡君には話した。

「えっ!すみません。僕が余計な事したかも。」

「ううん!」

私は手を大袈裟に、左右に振った。

「そう言えば、僕久実さんの連絡先知ってたのに。ああ、何やってんだろ。本当にごめんなさい。」

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