先輩の彼女
あたふたしている谷岡君に、可愛ささえ覚えるお姉さん。

「有り難う。本当に、いい人ね。谷岡君って。」

「久実さん……」

「なんか、こんな大きなバイク乗ってるし。本当はバイト、大学の授業が終わってからなんでしょう?それなのに、朝早くから鍵、届けに来てくれたり。」

人の優しさに触れると、こんなにも心が穏やかで、温かくなるんだ。

谷岡君と一緒にいると、そんな事を感じるようになった。

「もしかしたら、私……好きになる人、間違えたかな。」

谷岡君は何も言わずに、バイクのエンジンを止めた。

「なーんてね。じゃあ、私。仕事で行かなきゃなんない場所あるから。またね。」

「あっ、久実さん!」

谷岡君が、バイクから降りて来た。

「どうしたの?」

何気なく、緊張してる感じが、伝わって来た。

「仕事、忙しいのに引き止めちゃって、ごめんなさい。でも、今言わなかったら、二度と言えない気がするから。」
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