先輩の彼女
私は間野さんに、背中を向けた。

「待て、斎藤。」

低い声が、私を呼び止めた。

「はい?」

振り返ると、いつにも増して、恐ろしい形相の間野さんさんがいた。

「どうしてお前は、油断するとこう、男としゃべってんだ?」

「別にしゃべってなんか……潤平君は、落としたキーケースを届けに来てくれたんですよ。」

「だったら、受け取ってはい、終わりじゃないか。何、今度のデートの約束まで、ちゃっかりしてんだ!」

「デートの約束って、そんなんじゃ!」

間野さんが、私の顔を覗き込む。

「相手はそう思ってるよ。それとも、男だったら、誰でもいいのか?」

「何ですか?それ!!」


男だったら、誰でもいいって、失礼な!


「そんな訳ないじゃないですか!私だって、好きになるタイプぐらい、あります!」

「好きなタイプ?お前に?例えば?」

「例えば……」

そんな時に限って、目の前に広がる間野さんに顔に、ロックオンしてしまう。
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