先輩の彼女
「何?本気にしたの?久実、冗談よ。」

絹花は私の肩を、ポンッと叩いた。

「ごめん。また今度ね。」

絹花は、男性陣にそう言って、私の隣の席に戻ってきた。

「なーんだ。」

「だよなー。」

男性陣は、諦めて奥の席に行ってしまった。


事は収まったけれど、これは酷すぎる。

「絹花!」

私が大きな声を出したら、お店の人に、首を横に振られた。

「何?説教?勘弁して。」

すると絹花は、テーブルに肘を付き、ウトウトし始めた。

これだけ身勝手な人も、見た事がない。

ううん。

絹花は、大学時代。

ワガママはワガママだったけど、これだけ身勝手な女じゃなかった。

きっと、社会に出てからの数年の間。

絹花をチヤホヤしてきた男達が、彼女をここまで身勝手な人間にしてしまったんだと思う。

そう思うしか、絹花を許す事なんて、できなかった。
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