先輩の彼女
案の定、今日もタクシーで帰る始末。

しかもタクシーの後部座席に、3人ギュウギュウ詰めで。

「ねえ、裕一。明日、休みでしょ?泊まってって。」

急に絹花が、間野さんにすり寄った。

「悪い。明日、客のところ行かなきゃならないんだ。」

「そうなの?」

驚いたのは、絹花だけじゃない。

私も驚いた。


「えっ?誰のお客様ですか?」

もしかして、私だったらどうしよう。

「斎藤の客じゃないよ。白石が、店の店員とトラブったんだ。その後処理。」

「そうだったんですか。」

二人に気づかれないように、ほうっとため息をつく。

営業に異動になってから、人知れずため息をつく事が、多くなったと思う。


「そっか。残念。」

「ごめんな。今度、穴埋めするから。」

二人のそういう話は、私のいないところで、やってほしい。

もう仲のいい二人を見てられなくて、私は窓の外を眺めた。

でも失敗。
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