先輩の彼女
「タクシーの中には、落ちてなかったぞ。この前みたいに、道に落ちてないか?」

急に間野さんは道にしゃがんで、鍵を探し始めた。

「先輩……」

「ないな。バッグの中、もう一度探してみろ。」


また怒られて、また嫌われる。

それでもいい。

間野さんに、これ以上。

有る鍵を、探させるわけにもいかない。


「先輩、ごめんなさい。」

「えっ?」

私は先輩の目の前で、バッグから鍵を出した。

「なーんだ。バッグの中にあったのか。よかったな。」

間野さんはほっとしながら、立ち上がった。

「……最初から、バッグの中にあったんです。」

「何?」

「すみません。」

私は間野さんに謝った。

「すみませんって、どういうつもりだよ。タクシー、降りちまったじゃないか。」

「だって!もっと先輩と、一緒にいたかったから!」


勢い余って、ついに言ってしまった。

「斎藤……」

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