先輩の彼女
「迷惑だって言うのは、分かってます!絹花に悪い事してるって言うのも。だけど!もう抑えきれないんです!」

「あ、あのな。斎藤……」

間野さんの手が、私の腕を掴む。

顔を上げたら、間野さんの赤く染まった、困った顔が目に飛び込んできた。

「……好きなんです。先輩の事が……」


そのまま、時間が止まった。

間野さんは、何も言わず困った顔をしていて。

私も何も言わずに、泣きそうな顔で、間野さんを見続けた。


ふいに誰かが、私達の横を通りすぎた。

それをきっかけに、間野さんは私の腕から、手を離す。

「なんだか最近。毎週のように、斎藤を自宅までタクシーで送ってるような気がするな。」

「えっ?」

「俺、こんなに頑張ってる奴、見るの初めて。」

「先……輩……」

嬉しくて涙が溢れた。


ドジばっかりで、心配ばかりかけて。

間野さんに誉めて貰えるような事、何一つしていないけれど。
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