先輩の彼女
間野さんは手を伸ばすと、私の涙をその指で、拭ってくれた。

「けど、ごめんな。今の斎藤が言ってくれた言葉。聞かなかった事にしてくれないか?」





ー 好きなんです、先輩の事が。ー



あの言葉を?

聞かなかった事に?



「そんな!」

私は間野さんに、寄りかかった。

「お前は、酔ってるんだよ。」

頭が空っぽになって、腕に力が無くなった。

「俺、ここから歩いて帰るな。お休み、斎藤。」

そう言って間野さんは、私の腕を優しく外すと、クルっと背中を向けて、離れて行ってしまった。



何回泣けば、気が済むんだろう。

何回傷つけば?

何回辛くなれば?


私の精一杯の告白を、断るどころか、受け取ってもくれなかった間野さんを。

私は諦める事も、忘れる事もできない。



そんな私は、だんだん小さくなって行く、間野さんの背中を、見続けるしかなかった。
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