先輩の彼女
しかも、他の部門は1万冊とか売れてるのに、レディコミだけ、1100冊。

それで先月のトップとか言われても、返って恥ずかしい。

「先月トップって、すごいな。新人なのに。」

間野さんが、声を掛けてくれた。

あくまで、いつも通りに。

「トップって言っても、他に部門と桁が違いますから。」

「気にすんな。トップはトップ。新人で先月の売り上げを上回るって、すごい事なんだぞ。」

間野さんは何気なく、私の背中を軽く叩いた。


優しい言葉に、ボディタッチ。

振られた後の方が、優しいのは皮肉なものだ。

逆に、振ってしまった事へのお詫び?

席が隣同士で、ギクシャクしたくないから?

まさか。

いや、間野さんだったら、考えなくもない。


「斎藤?聞いてるか?」

「えっ?」

その途端に、間野さんと目が合う。

「あ、はい。」

返事をしても、目を反らさない間野さんは、明らかに告白する前とは違う。
< 163 / 182 >

この作品をシェア

pagetop