先輩の彼女
ダメだ。

私はすかさず、休憩室へ行く。

タダのコーヒーを、2杯のみ。

大きく深呼吸をした。

落ち着け、私。


「お疲れさまです。」

突然横から、白石さんが手を伸ばした。

「あっ、ごめんなさい。」

コーヒーのある場所を占領していた私は、直ぐに一歩下がった。

「そう言えば斎藤さん。今月の売り上げよかったんですよね。」

「ああ……いや、あれは……よかったと言うか、なんと言うか……」

とても、“はい。有り難うございます。”とは、言えない。

「さすが、間野先輩が教えていただけの事は、ありますよね。」

「そう……ですね。先輩には感謝しないと。」

私がもう一度コーヒーを注いで、席に戻ろうとした時だ。

「そう言えば、間野先輩は大丈夫なのかな。」

「えっ?」

白石さんが、カウンターに身体を寄せて、棚と壁の隙間を覗いている。

「何してるんですか?」

「シーッ。」
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