先輩の彼女
斎藤久実。

25歳。

大学卒業後、漫画出版社に入社して3年。

その日は、あまりにも突然やってきた。



「えっ?営業部ですか?」

上司に言われたのは、お説教どころか、異動の話だった。

「ああ。斎藤君ももう3年、編集の仕事やっただろう。ここらで、スキルアップに他の部署に行くって言うのは、どうかな。」

「はあ……」

スキルアップだったら、何も他の部署なんかじゃなくて、同じ編集の仕事の、例えば担当の漫画家さんを付けてくれるとか、そういう事をしてほしかった。

「そんなに、難しく考えなくてもいいんだよ?実はね、レディースコミック担当していた営業の女の子がね、結婚して営業以外の部署を希望してるんだよ。」

結婚……

いいなぁ。

「そこで、レディースコミックを主に担当していた斎藤君だったら、その女の子の後を引き継いで貰えるんじゃないかって、営業部の人が言っていてね。」
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