先輩の彼女
「はい。」

「勉強になったか?」

その言葉に、私はゆっくりと、間野さんを見た。

「俺もさ。営業に来た時は、右も左も分からなかった。隣の席に座ってた先輩は、付きっきりで教えてくれるタイプじゃなかったんだが、質問すれば答えてくれてさ。それが、今の俺の営業の基礎になってんだ。」

真面目で、爽やかで、営業ができるタイプ。

そんな間野さんでも、営業に戸惑っていた時期があったなんて。

ちょっと、意外。

「帰りも、斎藤の言う通り、ファミレス入って、どっかビジネスホテルに一泊してもよかったんだが、斎藤は嫌だろ?」

「えっ?」

「曲がりなりにも、会って間もない奴と、同じ部屋で一泊なんて。突然の事だろうから、泊まる準備もしてないだろうし。」

「間野さん……」

すると、間野さんが少しだけ私の方を見て、ニコッと笑った。

その笑顔が、思った以上に可愛くて、また心臓がドキンと鳴った。

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