先輩の彼女
山田さんがふいに、私の手に渡してくれたモノ、それは某アニメの女性フィギュアだった。

「はい。」

「やる。」

「えっ!あんなに大切にしていたフィギュアなのに、私にくれるんですか!?」

「ああ。」

確か買うのに、定価の10倍もしたって、絶対触らせてもくれなかったのに。

どういう風の吹き回しだろ。

「その代わり、多少辛くても仕事辞めるなよ。」

「……山田さん。」

「また編集に戻ってきたら、一緒に仕事しような。」

私は山田さんの言葉に、ジーンと胸が熱くなった。

適当な人としか思ってなかったのに、こんなに優しい人だったなんて。

今日は、初めて知る事ばっかりだ。


「お疲れさまです。」

横から入って来たのは、ここでバイトをしている大学生の谷岡潤平君だ。

「あれ?何で山田さんのフィギュア、久実さんが持ってるんですか?」

バイトの谷岡君も、そりゃあ驚くよね。
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